各界で活躍する多くの同窓生を紹介するシリーズ第6回は神奈川県立こども医療センターで小児科医をされている田上幸治さん(高校39期)です。田上さんは子ども虐待にも力をいれ、被害にあった児の支援をするため、2019年にNPO子ども支援センターつなっぐを立ち上げました。
【?どんな高校時代でしたか】
・憧れの高津高校に合格でき、目の前が大きく開けた感じがしました。合格発表の時のあの晴れやかな高揚感は今も覚えています。
・運動はできる方ではありませんでしたが、おもいっきり体をぶつけたい様な衝動に駆られラグビー部に入りました。練習はきつかったですが、先輩や仲間に恵まれ充実した3年間でした。今でも12/30に同級生と大騒ぎしますが、今でもあの頃にすぐに戻ります。
・体育祭や文化祭も張り切って、たくさんの思い出があります。勉強はしませんでしたが、青春を謳歌し尽くした感があります。
【印象に残る先生は】
・ラグビー部の顧問の岡本先生や担任の竹田先生、増地先生、馬場先生にはたいへんお世話になりました。芸術の選択が美術だったこともあり、増地先生にはたくさん刺激を貰いました。
・先生が私に向かって言ったわけではないですが、「あんなことができるんだから、なんでもやってやれないことはない!」みたいなことを言われたのは今でも覚えています。
【今現在はどういう仕事を】
・多浪の末に京都大学農学部に進学しましたが、昔の同級生は大学で既に活躍し、俺は何やってんだろう、と高校のこと、自分自身も疎ましく悶々とする日々でした。「こんな自分でも社会の役にたてれば」と障害児のボランティア活動に参加し、自閉症の子ども達と山を歩いたり、プールに入ったり・・・。子ども達からいろんなことを教えてもらいました。
・そこで進行性の疾患の持つきょうだいと出会いました。幼児期までは歩き回っていたのに、寝たきりとなった子ども達を目にし、「この子達に何ができるのか?」と考えました。医者になっても治せないかもしれない。でも、助けられるのは医者しかいない。大学3年生で再受験を試み、和歌山県立医大に入学し、小児神経科医を目指しました。
・2010年4月から神奈川県立子ども医療センター勤務し、てんかん、発達神経症や障害をもつ子どもたちの診療にあたっています。
【NPO子ども支援センター つなっぐについてお聞かせください】
・乳幼児の虐待を経験し、何の罪もない子どもが被害にあわないといけないのか、と憤り感じ子ども虐待にも対応しています。親からのクレームや児童相談所や警察などとの連携など多くの課題に直面しましたが、誰かが頑張らないと社会は変わらないと思い頑張っています。
・虐待、特に性虐待の本邦の現状は欧米から30年の遅れがあります。全米には900ヶ所以上のChildren’s Advocacy Center(CAC)があります。虐待にあった子ども達が子どもに優しい環境で、聞き取り、診察、心のケアを受けることができるワンストップセンターです。
・子ども病院である神奈川県立こども医療センターの中で、聞き取り、診察、心のケアをできるように、2019年本邦で二番目のCACであるNPO法人 子ども支援センターつなっぐを設立しました。虐待の被害にあった子ども達が少しでも早く、少しでも多く救えたらと頑張っています。
【高津高校時代が現在にどうつながっていると思いますか?また現役の高津生になにか伝えたいことは?】
・「人生に必要な知恵はすべて幼稚園の砂場で学んだ(ロバート フルガム)」じゃないけど、人生のすべては上町台地の自由と創造の基で学んだ、感じがしています。多感なかけがえのない青春時代を高津高校で過ごせたことは私にとって大きな財産です。先生、先輩や同級生の方々に感謝でいっぱいです。
・人生はずっと勉強が続きます。現役の高津生には高津高校でしか学べない大切なものを学んでもらいたいと思います。勉強はちょっと後回しにして、上町台地での学びを、後の長い人生の為にしてください。
【取材後記】
・本来なら直接お会いしてインタビューすべきところを、メール中心でのやりとりでの取材となりましたが、文章のなかにも子供たちに真摯にむきあうお人柄がよく現れていて心打たれました。
・本シリーズは2016年11月から更新されておらず、約6年ぶりの投稿となりましたが、これからも活躍する同窓生を多く皆様にご紹介していきたいと思います。
取材日 2023.01.10