新企画の「著名人シリーズ」ですが、第1回の放送業界からヒロ寺平さん(高校22期)に続き、第2回は、趣向を変えた行政の分野からです。平成27年7月まで大阪府副知事をされておられた小河保之さん(高校17期)にお願いしました。
■どんな高校時代でしたか?
・高校時代の1~2年は暗かったです(笑)。幼いころ近所のおばちゃんに「努力は天才に勝る」と教えられたせいか、コツツコツ勉強する真面目な生徒でした。難しい数学の問題なんかを解くのに快感を覚える、面白みに欠けた日々でした。
・その反動で、3年生になって勉強ばかりの生活を意識的に変えようと思いたちました。そこで、友達との付き合いを大事にしたり、体育祭の準備にのめり込んだり、また女性にも意識しだしました(さすがに、これは急にはうまくいきませんでしたが・・(笑))今振り返ると、懐かしく思い出します。
■なぜ大阪府に就職されたのです?
・京都大学で土木を専攻したので、それを具体的にまちづくりに実践できる職場として、生まれ育った大阪を少しでも良くしたい、との思いで府庁に就職しました。
いろいろと建設現場やまちづくりを経験しましたが、単に机上で施設や道路を描くのでなく、計画する段階からそれに関わる地域住民にも参画してもらえば、よりいいものになるのでは、と、アドプトプログラムという府民協働の仕組みを作り、各地で展開しております。
少しは、就職時の思いを実現できたのでは、と思っています。
・例えば、駅前再開発であれば、ともすれば行政は、前例踏襲で図面を書いてしまうので、どこの駅前再開発も似たり寄ったりになりがちです。
駅前を地域の人に愛着をもってもらうには、事業の計画段階から、地域の住民やそこで商売し通勤・通学する人達にも、何らかの形でかかわってもらえば、地域の玄関口であり、地域の顔でもある駅前を大事にし、さらに個性豊かに育てていってもらえるのではないでしょうか。
行政は、それにどう協力し支えていくかが大きな役割では・・・。
■何か印象に残っている仕事はありますか?
・府庁に就職したのですが、奈良県・兵庫県で、6年間勤務しました。特に兵庫県では、大震災を経験し復旧復興に携わってきたことが、危機管理を担当する危機監理監や副知事での危機管理業務では、大変役立ちました。しかし、在任中に大阪では大きな災害がなかったので、ホットしております。ただ、いつ起こっても不思議でないので、「備えよ、常に!」ですよ!
・ただ、災害時に府庁へ30分以内に駆けつける必要があり、堺市に住んでいるのに、単身生活を余儀なくされ、他府県での勤務なども含め、通算20年間単身赴任で過ごしました。
・しかし、この単身生活の経験で、完全に自立(特に食事で)できるようになり、朝食では、特製の野菜ジュースや納豆・わかめを入れた野菜サラダ、きな粉やゴマ入りのヨーグルトなどを考え、十数年以上続けております(笑)。
■人気のあった知事のもとでのエピソードはありますか?
・橋下知事の就任以来、人気がすごく、いつも記者やテレビカメラで、府庁内はまるで劇場のようでした。多くの会議も公開でしたので、いつもTVのニュースを賑やかせていました。会議ではだいたい知事の隣に座っていましたので、よく友人や知り合いの人に、いつも顔をみているよ、と冷やかされていました。
・また、多くの公式行事に知事の代理で出席することがありました。多くの参加者は知事に会えることを期待されているのに、私が代理で登壇するのですから、「なんだ」と会場から聞こえたり、雰囲気が伝わってきたりした経験を多くしました。そんな時に登壇して、知事の挨拶文を読むのですから、開き直って「すみませんね、本物でなく、がっかりさせて・・・」と、少しアドリブを入れてから、挨拶文を代読したことがありました。これは、結構受けましたよ(笑)
■ご趣味は?
・中学時代にクラリネットをしたこともあり、50歳になってからフルートを始めました。府庁の若い人たちのバンドに入れてもらい、府庁の公園関係のイベントなどで演奏しております。メンバーが、「このバンドには定年はない」と、言ってくれていますので、今でも続けております。
音楽を楽しむとともに、若いエネルギーを吸収させてもらっています(笑)
■高津100周年への期待はありますか?
・100周年事業を同窓生のみでなく、現役の生徒に照準を当てることを期待します。例えば、生徒の進路相談に現役同窓生が直接相談できるような仕組みが出来ないでしょうか。同窓会名簿で登録されている大学・資格・就職会社の情報を上手く活用できればと思います。
・聞くと100周年の寄付施設で「ラーニングコモンズ」と云う、同窓生・地域住民にも解放した空間を検討されているそうですが、この企画に興味があります。これまでの行政経験で、学校施設はもっと地域で利活用されるべきだと思っており、母校がそれを実践するのは楽しみです。
【取材後記】
・土木というのは、単に構造物を「造る」のではなく、社会を良くするために、仕組みやシステムなどを考え、新しく「創造する」ことも重要で、「創造」の伴わない「自由」は意味がない、と熱く語られる姿勢に、「自由と創造」の原点を教えて頂いたように思いました。取材の後、「ラーニングコモンズ」(「創造」を意識し“クリエイトラボ”とネーミング)の企画でのオブザーバーを快諾いただき、実りある取材となりました。
取材日 2015.10.09