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2014.03.06 15:50

平成26年度 卒業証書授与式 校長祝辞

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本日ここに、大阪府立高津高等学校、第66回卒業証書授与式を挙行致しましたところ、公私とも何かとご多用にも関わりませず、多数のご来賓のご臨席を賜りましたこと、壇上からではございますが、厚く御礼申しあげます。

保護者の皆様、めでたくお子様の卒業をお迎えになりましたこと、お喜びもひとしおかと存じます。心からお祝い申しあげます。

また、入学以来、本校教育活動の振興に寄せられました、ご理解、ご支援に対しまして、この場をお借りして、厚く御礼申しあげます。

さて、ただ今、栄えある卒業証書を授与された、359名の皆さん、卒業おめでとうございます。
本校での厳しい学習や、特色ある学校行事、部活動などに取り組みつつ、嬉しかったことや辛かったことなど、さまざまなことを乗り越え、今日という日を迎えた皆さんの努力に心から拍手を送ります。

皆さんは、本校が大阪府教育委員会から「進学指導特色校」の指定を受けた最初の学年として入学しました。入学以来、本校創立以来の「自由と創造」「日新日進」の精神のもと、家族の皆さんや、PTA、同窓会、地域の方々などから多方面にわたる支援をいただきながら、性別や個性、国籍、障がいの有無、文理学科と普通科などの違いを包み込み、一人ひとりが自分の色を輝かせ、学校全体に虹を架けてくれました。

「高津生は一つ」を実感し、大変嬉しく思っています。

また、入学間もない4月下旬に、滋賀県大津市で実施した2泊3日の学習合宿を思い起こしますと、現地で厳しい指導もいたしましたが、その後、随分成長してくれたと、感慨深いものがあります。

今、 皆さんは、この場に、どのような気持ちで臨んでくれているでしょうか?
3年生になったばかりの昨年4月、クラスごとに校長室に来てもらい、卒業後の進む 道はそれぞれ違っても、「高津」で学んだことに誇りを持ち、顔を上げ、胸を張って卒業してほしい、とお願いしました。
きっと、今、そのような気持ちで、卒業式に臨んでくれていると思います。

皆さんに直接お話しする最後の機会になりました。
伝えたいことは山ほどありますが、あれやこれやと考えを巡らすうちに、結局、今まで、皆さんの先輩たちにお話ししてきた、次の3点に行き着きます。

1点目は、「高津高校の精神」です。

はじめに、私が伝え聞く、創立から3代にわたる校長先生のエピソードを紹介します。

本校の初代校長 三澤先生は、大正7年(1918年)創立当初から、リベラリズムとデモクラシーが台頭する中で、大阪はもとより全国にも知られる、進取の精神に充ち溢れた新しい学校づくりに取り組まれました。
たとえば、当時の厳しい男尊女卑の風潮の中でも、複数の女性教諭を採用されています。
そして、言うまでもなく、本校の土台である「自由と創造」を提唱されました。

第2代校長 羽生先生は、国際関係の軍事的緊張のため、学校での軍事教練が一層強調され、学校に将校が配属される中でも、「日新日進」のもと、自由な学校教育に取り組まれました。
また、人間性の教養の観点に立って、上級学校入学準備に没頭して、他を顧みないのではないかと思われる人が見受けられるのは、誠に遺憾である、とも述べておられます。

第3代校長 久保川先生は、ご就任されていた時代が、まさに太平洋戦争の真っ只中にありました。
当時の世の中の、戦争遂行の流れに抗しきれず、生徒たちを戦争に送りだした責任を教育者として痛切に悔まれました。戦後すぐ、生徒たちを集めて、このことを謝罪し、自ら校長職を辞されました。
時代に翻弄されつつも、高潔なお人柄を偲び、皆さんの大先輩たちは、「久保川先生から、人たる道を教えられた」と語り継いでおられます。

戦後、清水谷高等女学校との交流により、高津高校として出発したときには、先生方は、生徒への信頼をもとに、制服を定めず、自由服とするなど、旧制高津中学校の校風を引き継ぎました。

このように、皆さんが何度も聞いた「自由と創造」など、本校の校風・伝統は、草創期の校長先生方はじめ、多くの先生方、諸先輩の営々とした努力により、脈々と続き、継承発展しているものです。
きっと、皆さんも、本校での学びを通して、受け継がれてきた、「高津生の核心部分」を体得したことと思います。

人間には、他者からの評価を気にしたり、世間の風評に流されたり、多数意見や力の強いものに寄り添ったり、一時の感情で判断を誤ったりするなどの、落とし穴があります。
また、昨今、根拠薄弱な自己主張や詭弁、インターネット上での匿名による卑怯な発言など、世の中の危うい言動を憂えるものです。

高津高校の卒業生となる、皆さんには、客観的真理を追究する科学的態度を持ち、「権威」や「権力」に屈することなく、誰彼にも筋道を通して意見を述べる人間になってほしい、と願います。
また、自分自身を見失うほどの逆境にあっても、この上ない幸福感に包まれていても、「YES」と「NO」の区別をしっかりつけ、「YES」「NO」をきちんと発する人間になってほしい、と願うものです。

次に、2点目は、「命と平和の大切さ」です。

皆さんが本校に入学する直前の3月11日、東日本大震災が生起し、甚大な数の尊い命が失われました。
多くの小・中学生や高校生が犠牲になったことは、教育に携わる者として、心が痛みます。
また、災害や事故などとは異なり、「若さ」という特権を有しながら、自らを傷つけたり、他者を攻撃したりするニュースを見聞すると、誠に残念な気持ちになります。

皆さんには、「生かされている」というチャンスを生かし、限りある命を大切にしてほしいと願っています。
さらに、一つ一つの命は他の多くの命とつながり、支えられています。支え合う究極の姿は平和であり、平和であればこそ、学ぶことも仕事も、趣味に興ずることも、恋愛することも、自由に発言・行動することも、すべて可能となります。

自分の命をどのように生きるのか、そして、他者の命をどのように尊重するのか、命への畏敬の念を抱き、自他の命を大切にし、平和のうちに生きることを願って止みません。

最後に3点目です。

亀井勝一郎さんの「邂逅し、開眼し、瞑目す」という言葉を贈ります。

私は、高校卒業後、生まれ育った大阪を離れ、東京の大学へ進学し、一人で下宿生活を始めました。
当初は、慣れない自炊や、東京の言葉に戸惑いましたが、やがて、大阪とは異なる文化に刺激を受け、自分の興味ある授業を選択し好きな本を読み、映画や旅行に行き、クラブの友だちと愉快に騒ぐなど、高校時代とはまた異なる青春を謳歌していました。

そのような時に、ふと思いました。
「自分はどんな人間なのか、友人たちと楽しく過ごしているが親友と呼べる人間はいるのか。逆に、友人にとって自分は親友と呼べる人間なのか。このまま大学で学 んでどうなるのか。社会に出て一人の人間として役に立つのか、自分は何処へ行こうとしているのか・・・」などと、思い悩んでいるときに、この言葉に出会い ました。

意味するところは、「人は、他人やモノ、自然などに出会って(邂逅)、それまでの疑問や悩みの解決へのヒントを得ます(開眼)。
しかし、結局はそこにとどまらず、また新たな課題に直面し、再び考え出す(瞑目)」、これを繰り返す、ということです。
この言葉から問題の直接の解決は得られませんでしたが、気持ちの在り様を学びました。皆さんには、「邂逅し、開眼し、瞑目す」ことを繰り返しながら、今より先へ、今より高みへ進んでいってください。
以上、「高津高校の精神」「命と平和の大切さ」「邂逅し、開眼し、瞑目すること」の3点についてお話ししました。

卒業生の皆さん、今日、日本だけではなく、世界中の国や地域において、政治・経済・社会・文化など多方面で混乱が生じ、従来の価値観では対応できない不安定さが見受けられます。
加えて、不寛容、不合理、差別や貧困などが渦巻いています。おそらく、ご両親や先生たちが経験したことのない、あらゆる分野での激しい変化や、先を見通すことが難しい時代を迎えています。
このような状況にあっても、ぜひ、本校で過ごした3年間を心の糧とし、日々気持ちを新たに、自らの人格を鍛え、正々堂々と自己実現をめざしてください。
あわせて、本校卒業生の使命として、あらゆる分野において、他人の心の痛みを受け止めつつ、課題の解決に臨み、最後まで逃げずに責任を果たす、真のリーダーになってください。

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皆さんが社会に出る頃、本校は創立百周年を迎えます。
今日の感激と決意を思い出し、新たな気持ちですすんでください。
遠い将来、皆さんが、自分の人生を振り返ったとき、「他人の人生と取り替えたいとは思わない人生だった」と言えることを確信しています。
終わりに当たり、ご来賓、保護者の皆様方には、これまでの本校に対する、ご理解、ご協力に、改めて感謝申しあげますとともに、従前にもまして、高津高校への絶大なるご支援、ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

それでは、卒業生の皆さん、健康にはくれぐれも留意し、自らの目標に向かって精進され、その努力が花を咲かせ、実を結ぶことを、心から念願して、卒業式の式辞とします。

平成26年3月1日
大阪府立高津高等学校長 尾上良宏


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