同窓会では100周年記念事業の一環として、各期・クラブの幹事を中心にインタビュー記事を掲載してきました。読者の皆さんから、もっと各界で活躍する多くの同窓生を紹介して欲しいとの要望が多いことから、「著名人シリーズ」と「頑張ってるシリーズ」を新たに追加することにしました。
今回は「頑張ってるシリーズ」の第1弾として、上方落語のホープである桂紋四郎さん(本名 迫 優太:高校58期)に登場いただきました。
【親父も高津です】
・実は父親も高津(28期)なんです。僕が子供の頃から、普段は無口なのに、妙に高校時代の、それも高津の話になると、がぜん盛り上がるんです。なので、小さい頃から漠然と高津高校に行きたいなぁと思ってました。
・高津に通ってる頃は毎日がホンマに楽しかったですね。硬式野球部に入っていたので、朝練してから授業に行くのですが、着替えるのが邪魔くさくて練習着のまま受講することもありました。砂だらけにして怒られたこともありますね(笑)ポジションはセカンドで、副キャプテンでした。記念祭も毎年楽しみで、3年の時にはクラスの出し物で、ルパン3世のパロディーを脚本・主演しました。脚本は、大学受験のためには大切な夏休みに書かなければならなかったので、勉強の合間に予備校の休憩室で書いてました。休憩に来た友達にアドバイスをもらったりしてワイワイしてたのが、今思うとイイ息抜きになっていたかもしれません。
・お笑いは昔から好きでしたね。小学校の学芸会ではよく友達と数人でコメディをやってましたし、大阪大学でも、コミックバンドのボーカルでしたが、曲のつなぎのMCで笑いを取るのが好きでした。実は、落語との接点はそのMCなんです。
【なぜ阪大大学院中退して落語の世界に?】
・というのも、将来何をするかハッキリした目標もなく、阪大の工学研究科(大学院)に進学したのですが、バンドのMCに使えるオモロい話ないかなぁと落語のCDを借りたのが始まりでした。
・こら、オモロい!生で見よう!と劇場に行くようになりました。そんな中、劇場全体を笑いに巻き込む春蝶師匠と出会いました。心底感激し、入門を申し込みました。当時、師匠はお芝居の仕事でお忙しく、「今は忙しいから、2ヶ月後にまた話を聞きます。」と言われたのですが、今振り返ると半ば断りの意味があったのかも知れません。
・でも、こちらは気持ちが高ぶっていますから、次の日早々に大学で「退学届け」を貰い、親を説得することになったのです。この時の親父の驚きは凄まじいものでした。(笑)
【落語の奥深さ】
・落語は古典芸能であり大衆芸能でもあるのが特徴やと思いますね。笑ってもらってなんぼと思ってますし、古典の情緒も感じて欲しいなとも思ってますし。ただ、同世代の人たちは古典の難しいものと思ってしまっている場合が多いですね。こないだも同級生に「落語会来てー」と誘ったら「何着ていったらええの?」とドレスコードを尋ねられました。普段着で良いのに、小難しく考えてしまってるんですね。映画を見に来る感覚で来ていただいて、落語の持つ古典的な魅力も表現できたらいいなと思います。現在、上方で約260名、東京で約550名の落語家がいます。よく地域によるお客さんの反応の差を聞かれます。もちろん、地域による差は、漠然とこの土地はこんな感じかなぁというのがありますが、同じ会場でも毎回反応が違いますし、大阪府下でも会場によって全然違います。
・例えば、大阪府下の高校生を対象とした芸能鑑賞のイベントがあるのですが、同じ大阪の高校生を対象に落語をしても、全く違いますね。高津でもやらせていただいたのですが、やっぱりとてもノリがイイです。
・だいたい落語家は3年間修業期間というのがありまして、その間は自由時間がほとんどありませんでした。遊びに誘ってもらっても断ってしまうので、友達が少なくなりますね(笑)落語の稽古は師匠につけて頂きますが、題材によってはそれを得意とされる他の師匠に教わりに行くこともあります。古典落語の持つパワーを引き出せるような技術を早く身につけたいですね。
また、僕のような若手落語家の役割として、新しいお客さんに落語に興味を持ってもらうというのがあると思います。バンドの経験をいかして曲を作ったり、YOUTUBEで「紋四郎の川端会議」という自分のチャンネルを作って更新したりと今だからできることも積極的にやっています。古典と大衆のバランスを大事にして、師匠格になった時には、若い落語家によって興味を持ってきていただいた新しいお客さんに落語の魅力をちゃんと伝えられる落語家になっていたいです。
【高津創立100周年はピンと来ませんが…】
・100周年事業のコンセプトワードが「もっと自由に、もっと創造。」と聞きましたが、僕は「日新日進」が好きです。今年の上方落語協会のカレンダーは『2015年上方落語美笑男』(かみがたらくごびしょうめん)と題して、12人の美笑男(笑)の写真と簡単なプロフィールで毎月飾られているのですが、僕の座右の銘のところには「日新日進」と書いています。
・「自由と創造」より、「日新日進」が僕はしっくりきますね。毎日、前に進んでいる感覚って大事だなと思っています。これからも高津スピリッツを胸に日々前進して行きますので、宜しくお願いします。
※取材は、鶴橋駅前の寄席小屋『雀のおやど』でさせていただきました。こちらのオーナーも、高津卒業生(高校21期)、支配人も卒業生(高校22期)です。
【取材後記】
・初めての芸能人インタビューでしたが、紋四郎さんの礼儀正しい所作に、厳しい芸の社会で生き抜く覚悟のようなものを感じました。聞くと、その上方落語に同窓の宇都宮 正さん(高校22期=桂 蝶太)が将来を嘱望されながら、27年前に病死されています。もし健在ならと悔やまれてなりませんが、その分も紋四郎さんに頑張って頂いたいものです。
同窓生、頑張れ!
取材日 2015.09.29