講師:石原 敬浩(いしはら たかひろ)高校 30 期
防衛大学卒。海上自衛隊を退官したが、幹部学校の教官として再任用。慶應義塾大学 非常勤講師。戦略論、気候変動と安全保障、北極海問題、戦略的コミュニケーション等で研究論文を書いたり、講演もされています。
◆タイトル:「国家と防衛」
石原氏は慶應義塾大学で「国家と防衛」というタイトルで講義をされており、高津高校生が慶応大学の授業を体験できるとう貴重な時間となりました。もちろんまずは、「ロシアのウクライナへの侵攻はなぜ起きたのか」という喫緊の問題を取り上げられ、国際法に基づく解説に生徒たちは興味深く耳を傾けていました。様々なデータや参考書籍や引用、戦争の歴史資料を提示され、「この戦争は誰が悪いのか」「ロシアとウクライナも両方悪いは不適切」「国際秩序はどのようにして生まれてきたのか」「なぜ戦争はダメなのか」「混乱の時代に国家の意義を見直せ」など、生徒に多くを考えさせる内容でした。最後に「戦後は…いつまで戦後?戦後を継続するには努力が不可欠」という言葉で締めくくられました。
質疑応答では多くの生徒の手が上がり、以下のようなやり取りがありました。
生徒 :戦争はなくなると思いますか。
石原氏:ユネスコ憲章を読んでみてください。戦争は人間の心の中から始まると書いてあります。どこまで我々と思えるか。それが国境を越えるまでは難しい。意見の対立があった時に武力を使って力ずくでということが、今は悲しいかな、なくならないと思う。
生徒 :この戦争で日本は何をしているのですか。
石原氏:日本政府は早々と「侵略」と認定した。経済制裁をしている。日本は平和国家で憲法上の制約があるので武器弾薬は送れないが、防弾チョッキなどを自衛隊の飛行機で運び提供している。人道支援、避難民の受け入れもしている。
生徒 :日本人は他国の出来事を対岸の火事として捉えていると言われる。日本人はウクライナに志願兵として行くことはできないが、どこまで干渉できるのですか。
石原氏:どこまでできるかは政府の意思決定で、皆さん一人一人にかかっている。どの政党を選んで、どの政権を選択するかによって変わってくる。今の日本の憲法では軍隊を発することは到底できない。もっとやれと言うなら、国民がそれを政治に要求して行動すると変わる。それを決めているのは政府であり、それを作っているのは皆さんである。18才になり投票するようになれば、それが反映されて政府の意思決定になっていく。
生徒 :平和な国はどういう国ですか。
石原氏:日本です。世界中でこんなに恵まれた国はまずない。ぜひ若いうちに世界を旅してほしい。いざとなれば憲法で最低限の生活を保障される、ミサイルや大砲の弾が飛んでくる心配もない。世界に誇れる平和な国「日本」です。
この他にも活発に質問が寄せられました。卒業生からも質問がありましたが、時間が足りず強制終了となりました。生徒たちは、このセミナーを通して興味関心の幅が広がり、学びへの欲求が高まったのではないかと感じました。